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112話

「まだ遠いのか、お嬢さん?」私は何度も尋ねた。

「もうすぐよ、もうすぐ」お嬢さんはいつもそう答えるだけだった。

彼女は前に二百メートルほどと言ったのに、実際には三百メートル近く走っていた。角を曲がると、お嬢さんは前方を指さして言った。「ほら、見えるでしょう?あそこに診療所があるわ」

私はもう息も絶え絶えだったが、最後の力を振り絞って走った。

診療所の入口に近づくと、そのお嬢さんが言った。「ごめんなさい、私はここまでよ」

「えっ、証人になってくれないの?」

「お兄さん、私はこれから仕事があるの。時間がないわ。中に入って。善い行いには報いがあるわよ」そう言うと、お嬢さんはくるりと向きを変えて歩き去...