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96話

顧夫人は蓮青色の蓮花刺繍が施された絹のハンカチで目頭を拭うと、宮中へ入る娘を見つめた。胸が痛まないはずがなかった。肉親との別れ、この先二度と会えないかもしれない。伝えたいことは尽きることがなかった。

「賢妃様はお前の慕世叔の娘だよ。慕家の寒どのはお兄さんと軍営で一緒に勤めておって、二人はとても仲が良い。母さんは慕世叔の家に頼んで、賢妃様に宮中でお前のことを見守ってもらえるようにしておいたからね」

顧玥は母の悲しそうな顔を見て、自分も胸が痛んだが、慰めるように言った。

「お母様、私が宮中に入るのは天にも昇るほどの喜ばしいことです。陛下が私たち顧家に恩寵を与えてくださったのです。他の人が望ん...