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90話

「これは彼女の命脉、彼女の致命的な弱みだわ」

熱い涙がゆっくりと頬を伝い、手の甲に落ちた。その涙からは少しの温もりも感じられず、むしろ手の甲から寒気が広がり、血管を通って全身に染み渡っていく。

六月の空なのに、身を震わせるような寒さが波のように押し寄せる。もし慕昭儀が皇子を産んだら、この皇后の座も慕昭儀のものになってしまうのではないか。

幽蘭は見ていて胸が痛んだ。皇后様は賢良淑徳で優しい心の持ち主、どこをとっても椒房宮のあの女より優れているのに、陛下にはそれが見えていない。あの妖狐が陛下にどんな惚れ薬を飲ませたのか、陛下は毎日彼女から離れようとしない!椒房宮のあの女が入宮する前は、陛下と...