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72話

「あなたはねぇ、優しすぎるから騙されるのよ」成帝は呆れて彼女の鼻をつんと軽くはじいた。彼女ではないことは彼も分かっている。成帝はそれを考えるだけで腹立たしくなった。今や後宮では勝手に殴り合いや殺し合いまで起きているのだ。

成帝の冷淡な口調を見て慕桑は胸が凍りつく思いだった。いつか自分が死んだとき、不明瞭な陰謀の中で命を落としたとき、「事故だった」の一言で全てが片付けられるのではないか。成帝はまた無関心に冷ややかな声で「そういうことだ」と言い、全ての出来事が終わりを告げる。歌舞の宴は続き、笑顔が行き交う。皆が良し、全てが良し、だが乱葬岗に増えた怨霊など誰も気にかけはしない。

慕桑は必死に自分...