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68話

「痕跡は全く残っていませんでした。何もかもきれいに片付けられています」菊韵は思わず声を潜めた。

寒梅は慎重に皇后の足を支えながら、周囲に迫り来る嵐の前兆を感じていた。

皇后はそれを聞くと目を見開き、鋭い眼差しを前方に向けて、声に冷酷さを滲ませた。「きれい?ふん……調査を続けなさい。このわたくしは延禧宮が本当にきれいになったとは思わないわ。チャンスは滅多にないのだから、見逃してはならないわ。何か見つかれば、それに越したことはない」断固とした命令を下した後、不意に笑みを浮かべ、賢明な目に嘲りを満たして続けた。「太后様は李妃にご不満のようね。李妃も愚かだわ。太后様さえも眼中にないなんて。まるで大...