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312話

「山中に甲子なく、人間に日月長し。」

慕桑は馬術と弓術を学び始めてから、他のことに心を向ける余裕がなくなり、今ではすっかり様になってきた。

緑枝は指折り数えて、今日が中秋だと気づき驚いた。この数ヶ月、彼女は娘娘に付き添って何となく日々を過ごし、宮中の規則に縛られることもなく、侍女たちに細々と教えられることもなく、好きなように過ごしてきた。これが娘娘の言う「堕落」というものなのだろうか。だがこんな日々はあまりにも楽しく、今では宮中に戻りたいとはまったく思わない。

日の位置を見て、今からでも月餅をいくつか作れば間に合うと思った。夜に月見をする時、酒と月餅があれば良い。

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