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229話

「ようやく文定公主と見舞いに訪れた丹陽公主を帰らせた慕桑は、大きく息を吐きながら、富貴花が描かれた緑の天蓋を見上げた。怪我一つするのも大変なことだ」

緑枝は慕桑の衣装や装飾品を片付けていたが、赤金に真珠を巻いた白玉の耳飾りが片方しか残っていないことに気づいた。もう片方をどれだけ探しても見つからない。慕桑はそれについて気にする様子もなく、おそらく馬の背に乗っている時に落としたのだろう。あれほど危機的な状況で、耳飾りのことなど気にしていられるはずがない。緑枝もそう思い、それ以上こだわるのをやめた。

養生の日々は退屈で仕方がなかった。慕桑は自分が苔むしてしまいそうだと感じていた。狩猟の日々もすぐ...