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353話

「もしもし。」電話の向こうから藍月の柔らかな声が聞こえた。「どちら様でしょうか?」

「俺だ」と、私は小声で言った。

「あら、あなたね」藍月の声が急に明るくなった。「仕事終わった?もう帰る時間じゃない?」

「うん、外は雪が降ってるよ」私は質問に直接答えずに言った。

「そうね、外は雪が降り始めたわ」藍月は先ほどの質問を続けず、「雪の花びら、大きいわね。どんどん大きくなってる。どうしたの?風情に心動かされたの?」

電話越しに苦笑いしながら答えた。「何が風情だよ。お前は仕事終わったのか?」

「うーん、それは...終わったわ」藍月は笑いながら言った。「何か指示でも?」

「俺がお前に指示なん...