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21話
彼の胸に一瞬、奇妙な感覚が走ったが、声をかける間もなく、その人物は中へ入ってしまった。
室内では、ボスが相手と酒を交わしながら歓談していた。雰囲気は和やかで、緊張感など微塵もない。
給仕が目の前を通り過ぎる時、ボスのまつ毛が微かに動き、給仕の全身を一瞥した。唇の端の笑みが消え、眉の端が僅かに引きつった。
部下には分かっていた。ボスが自分を認識したのだと。
自分がボスを理解しているように、ボスもまた自分のことをよく理解している。
今頃ボスは緊張しているだろう。自分がなぜこの船に潜り込んでいるのか、その目的が分からないはずだ。
部下はあの日、孤島に置き去りにされた後、二日間酔いつぶれて...