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2257話

「こいつはマッチを持ち歩いているのか?」と思う人がいるかもしれないが、もちろん違う。彼のような山中で長年暮らしてきた男は、木をこすり合わせて火を起こす技術に長けており、十分もあれば火を点けられる。そんなことは彼にとって何でもないことだ。

二十分ほど焼くと、香ばしい匂いが立ち込め、肉が焼けた。安大壮は大きな口でむしゃむしゃと肉を食いちぎり始めた。本当に腹が減っていたのだ。ちょうど美味しく食べているところで、騒がしい音が聞こえてきた。彼が立ち上がって見ると、まずい、追っ手が来ていた。おそらく煙と火が敵を引き寄せたのだろう。彼は急いで焼けた犬肉を持って、山の上へと駆け出した。

すぐに追っ手が先ほ...