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60話

「あんたたち、知らない」左右を見回す。こんな時間、外にはあまり人がいない。たまに数人が通りかかるが、老人ばかりだ。こんな人たちに助けを求めるなら、オンドリに卵を産ませる方がまだ可能性がある。広場では元気に踊っていても、一歩そこを離れれば間違いなく最弱の存在だ。歩くのもフラフラしている。

「余計な話はいいんだよ。俺たち兄弟に、お前に挨拶しろって言われたんだ」背後の男がいらついた声で言い、ナイフを俺の腰に突きつける。「大人しく付いてくるなら良いが、そうでなきゃ、ちょっと血を抜いてやるぜ」

そう言いながら、ナイフを前に突き出した。痛みで思わず顔をしかめる。くそ、刃先が皮膚を破ったな。

「兄貴、...