




2話
組織の研修機関が何をしているのか、神のみぞ知る。なんと所謂心理学の専門家なるものを講師として招いたのだ。確かに心理学は奥深い学問だが、我々はうつらうつらと居眠りしそうになってしまうほどだった。
最初のうち、みんな体面を保つために必死に持ちこたえていたが、やがてスマホを見る者、居眠りする者と好き勝手になっていった。
私も所謂専門家の講義を聞いてみたい気持ちはあったのだが、周囲の雰囲気に流されざるを得なかった。蘭姉さんが言っていたように、どんな時でも環境に溶け込むことが大事なのだから。
案の定、蘭姉さんの方を振り向くと、ちょうど目が合って、二人で意味ありげに微笑み合った。
暇なら何かすることを見つけなければ。学生時代によくやっていたことを思い出し、軽く微笑みながら一枚の紙を取り、適当に文字を走り書きして蘭姉さんに渡した。
「専門家は専門家だね、レンガ運びの腕前が素晴らしすぎて、さっぱり理解できないよ!」
「ふん、小僧に何がわかるの。誰もが理解できるようなら、みんな専門家になっちゃうじゃない」蘭姉さんは笑いながら紙切れを返してきた。上には清楚な字で一行書かれていた。
「さすが蘭姉さん、真理をついています。敬服します」
時間が経つにつれ、自分も口が達者になってきたことに気づいた。学生時代の自分とはまるで別人だ。これも環境の影響なのだろうか。
「姉さんはね、知ってることがたくさんあるのよ。これからもっと姉さんから学びなさいな!」
また一行の清楚な字。なぜだか、恋愛しているような感覚に陥ってしまった。潜在意識の中では、互いに心惹かれ合う二人とはこういうものではないだろうか?
「ここにいる人の中で蘭姉さんが一番博識で、何より蘭姉さんが一番きれい」後半の一文は少し考えてから書いた。余計な波風を立てたくなかったからだ。
「小僧、私はもうおばさんよ」蘭姉さんはすぐに返してきた。認めてはいないものの、頬のえくぼが彼女の本心を裏切っていた。明らかに、この一発のおべんちゃら…いや、この一発の本心が効いたようだ。
「他の人たちはもうおばあちゃんだよ。もう少しでラー油のおばさんになっちゃうところ」今度はもっと大胆に紙を渡した。確かに環境は人を変えるものだ。
今この瞬間のように、周囲の人たちの親密な雰囲気が私の臆病さを変えていった。
「あのラー油のおばさんは大金持ちなのよ」蘭姉さんの紙がまた戻ってきた。
こうして言葉を交わし合いながら紙切れをやり取りするうち、自然と体が触れ合うことも増えた。最初は何気なくあの細くて白い手に触れるふりをしていたが、相手が避けないと気づくと、大胆にも撫でるようになった。蘭姉さんが睨みつけてきたときは、慌てて合掌して謝るしぐさをした。
そんな時、蘭姉さんは顔を背けて無視するのだった。
もちろん、私はそれで落ち込んだりしなかった。かつて読んだ格言によれば、男が女性を追いかけるには最低三つのことが必要だという。
一つ目は粘り強さ、二つ目は厚かましさ、三つ目は粘り強く厚かましくあることだ。
だから、厚かましく粘り強く、また紙切れを渡した。「へへ、蘭姉さん、怒って何考えてるの?旦那さんのこと?」
「小僧に何がわかるの」蘭姉さんの怒りは明らかに本物ではなかった。すぐに紙切れを返してきたのだから。
「僕はもう23歳だよ」女性の前で、弱みを見せたがる男はいない。特に美しい女性の前では。
私も例外ではなく、まるで羽を広げた孔雀のように、異性の注目を集めようと必死だった。
「23歳の童貞くんね」蘭姉さんは容赦なく、さらっと返してきた。
「どうして僕が童貞だってわかったの?」私は返事を書き、同時に驚いた表情の絵を添えた。
今度は蘭姉さんは紙切れで返さず、行動で示してきた。彼女はどうやら少し信じられないという様子だった。