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173話

勢いよくドアを開いたが、外には盼盼の姿はどこにもない。廊下の灯りをつけようとスイッチに手を伸ばすが、まったく反応がない。背中に一気に冷や汗が浮かぶ。台所に戻って包丁を手に取ると、靴さえ履き替える暇もなく、ドンドンと階段を駆け下りた。

「盼盼、盼盼!」

階段を下りながら叫び続けたが、廊下には物音ひとつしない。

ここは古い団地で、エレベーターもオートロックもない。階段を猛ダッシュで下り、建物の外に出ると、少し離れたところに二つの人影が見えた。ただ、そのうちの一つは、もう一人の肩に担がれていた。

くそったれ、あの噂は本当だったのか!

この前、この辺りで怪しい奴が出没していて、一人で歩く女性...