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68話

「姉さんのことは彼に言わなかったんだ。耐えられないだろうから。でも、もう彼と姉さんの縁談は完全に絶望的だということは分かっていた。

私たちが袁少爺の家に着くと、例の若い男が出迎えてくれた。私を見ると、とても喜んだ様子だった。

「衛さん、いらっしゃいましたか?どうぞお入りください」

私は微笑みながら、衛染と一緒に門をくぐった。客間に通されると、衛染は洋式の家具や調度品に驚きの目を見張り、羨ましそうにしていた。

「袁少爺はご在宅ですか?」と私は尋ねた。

「少爺は不在でして、ご家族を連れて天津へ行っております。ご存知の通り、来年の春には出発しますので、先に家族を送り、準備を整えているのです...