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43話

陽春三月、早春の頃。

什刹海は春の気配に満ちていた。柳の枝がそよぎ、微風が静かに吹き抜け、ところどころに散歩する人々の姿が見える。まさに悠々自適な風景だった。

私と衛苒は湖畔の石畳の道を歩いていた。彼は漢白玉の欄干に手を置き、心から喜んでいる様子だった。

この什刹海は広大な水域で、前海、後海、西海を含み、積水潭とも呼ばれている。かつてはその周囲に十の仏寺があったことから「什刹海」と名付けられた。清朝の頃から遊興や避暑の地となり、北京の名勝の一つとされてきた。周辺には恭王府や醇親王府などの王府や庭園が広がり、清朝の大学士和珅や光緒帝の実父である醇親王載沣もこの地に住んでい...