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36話

階段を降りて自分の席に座ると、姉が怪訝そうに私を見つめた。

「誰だったの?何を言われたの?」

「聞かなかったけど、坊ちゃんみたいな人だったよ。ちょっと話しただけ」

「見知らぬ人と何を話すことがあるの?あなたったら本当に。あの人がハンカチを落としたのが本当に偶然なのか、わざとあなたに声をかけるためだったのか、誰にもわからないじゃない。自分で降りてきて取ればいいのに、あなたがわざわざ届けに行くなんて。劇場や茶館なんて良からぬ人も多いのよ。もし悪意があったら、自分から厄介ごとを招くことになるわ。次からはそんなに親切にしないで」姉は不機嫌そうに私を諭した。

「わかったよ、次からはしないから」私は急いで...