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305話

「それじゃあね」と言って、小晴はもう一度私の手を撫でてから、名残惜しそうに扉を押して出て行った。

時間は音もなく過ぎ去り、あっという間に夜半過ぎとなった。

私はすでにうとうとと眠りに落ちていた。ギプスをしているせいで、仰向けにしか寝られない。

朦朧とした眠りの中で、ふと微かな風を感じた。

ん?窓も扉も閉まっているはずなのに、どこから風が?

そんな考えが頭をよぎった瞬間、私はハッと目を覚ました。

しっかり閉めていたはずの部屋の扉に隙間ができており、その隙間はどんどん広がっていた。

扉が半分ほど開いたところで、一つの影がサッと入ってきて、足音を忍ばせながらベッドの側まで近づいてきた。...