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279話

「こいつ、こんな凄い背景があるなら早く言えよ。俺まで巻き込まれるところだったじゃないか。腹黒い野郎だ」

心の中ではそう思いながらも、総経理は媚びた笑顔に切り替え、私を見る目には何と敬意さえ宿っていた。

「趙さん、やるじゃないですか。もう少しで私までこの件で巻き込まれるところでした。もういいですよ、辞めなくていいです」

そう言うと、書類を手に取り、私の目の前でずたずたに引き裂き、ゴミ箱に投げ捨てた。

「総経理、本当によろしいんですか?間違った決断をなさらないように」

この口調と、得意げな私の様子を見て、総経理は腹の中で怒りが収まらないようだったが、それでも必死に耐えている。

グループの会長が直々...