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975話

「うずら」が眉をひそめ、飲み物を注いでいる女の子に目を向けた。「いいよ、向こうに行って」

女の子は笑顔で頷き、背を向けて立ち去った。

私とうずらは視線を交わし、二人とも表情が引き締まる。隣のテーブルでの会話に耳を傾けた。

配膳カートを押す女の子がそちらを通りかかった時、丁寧に「譚社長」と声をかけた。

「それだけじゃない。他の従業員も、ここを通るたびに、あの譚社長に挨拶してるんだ」

私は声を潜めて、うずらに尋ねた。「兄貴、この譚社長って、逸舟渡客のオーナーなのか?」

うずらは首を振った。「わからないな。付き合いはないんだ。でも峰兄貴に聞けば、知ってるかもしれない。以前話した時、逸舟のことも出てき...