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56話

庭には静けさが漂い、もはや観光客の姿はなかった。煙草を半分ほど吸ったところで、突然後ろから腰に腕が回された。

「ねぇ、君を禁煙させる方法って何かないのかな?」背後から謝鋭の沈んだ声が聞こえた。

林喬は微笑んだ。謝鋭が自分のことを思ってくれているのはわかっていた。だが、禁煙なんてそう簡単にできるものじゃない。いつの失恋がきっかけで吸い始めたのか、もう覚えていないが、今の状態も別に悪くはないと思っている。

「僕には君みたいな才能はないよ。タバコだって辞められるなんて」

「試してもいないのに、どうしてわかる?」謝鋭は問い返した。

「試す気もないよ」林喬は煙を吐き出しながら、かなり我儘な調子...