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719話

鈴木三郎の姿が空港ロビーの向こう側に消えていくのを見送りながら、趙三斤と柳浄天はようやく我に返った。特に柳浄天にとって、古くからの友との別れは、まさに辛い離別そのものだった。

鈴木三郎の旅立ちが生死を賭けた戦いになることを、柳浄天だけが知っていた。彼らは自分たちを待ち受けているものが何なのか分からないままだったが、しかし成し遂げなければならないこともあるのだ。

「柳おじさん、行きましょう」趙三斤は柳浄天の肩を優しく叩き、まるで心の通じ合う人のように、そっと声をかけた。

「そうだな、帰ろうか」

車に戻ると、二人とも気分は高揚しているとは言い難かった。柳浄天は物思いに沈み、趙三斤もその雰囲...