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609話

道中は静かなものだった。趙三斤はマセラティを安定した手つきで運転し、夏霊墨は助手席に座って窓の外を流れていく景色を眺めながら、物思いに沈んでいた。

しばらくして、夏霊墨の会社に近づいてきたころ、趙三斤はためらいがちに口を開いた。「霊児、俺、数日ほど離れることになるかもしれない」

「どこへ行くの?」夏霊墨は顔を向け、首を傾げて尋ねた。

「製薬工場には鑑薬師が必要なんだ。さっき会いに行ったあの『醜女』はお前に対してあんな態度だったから、本来なら彼女にやってもらおうと思ってたことも、やっぱりやめた。俺たちの故郷に戻って、その役職を務められる人を探してこようと思ってる」

どうせ葉芷陌はここにい...