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585話

長年にわたり、全社員に認められた氷山の女神的存在である夏灵墨は、高嶺の花であるだけでなく、近づく前から既に千里の彼方へ拒絶されるような人物だった。しかし、今や皆の視線が注がる中、その氷山の女神が一人の男性の手を引いて、彼らの視界から立ち去ろうとしていた。

「灵儿?」ドアを出るとすぐに夏天豪と鉢合わせた。

この手を繋いだ光景が家族に目撃されるというのは、どう表現すればいいのだろう?少なくとも夏灵墨にとっては、まるで寝所を襲撃されたような気分で、その美しい顔は一瞬にして熟れた赤りんごのように真っ赤に染まった。

「お兄ちゃん……」結局、夏灵墨は小さな声で呼びかけたが、うつむいた頭のせいで、その...