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538話

一夜の戯れ、一夜の潤い——率直に言えば、夏霊墨は変わってしまった。少なくとも今の彼女には、趙三斤に対して純粋な気持ちを保つことができなくなっていた。

「霊児」趙三斤は微笑みながら、優しく呼びかけた。

その一声は石が大海に沈むがごとく、返事が返ってくるはずもなかった。だが趙三斤には、夏霊墨の華奢な体が一瞬震えたのがはっきりと感じ取れた。

かすかな反応ではあったが、それだけで趙三斤には分かった。夏霊墨が応えなかったのは拒絶ではなく、ただ彼女がまだ完全に受け入れられずにいるだけだということを。

夏霊墨の隣を静かに歩きながら、趙三斤の気持ちは春風が頬を撫でるように爽やかだった。

防壁というも...