5話
「趙三斤は盧盈盈のことをよく知らないが、盧嬌嬌は彼女の妹として幼い頃から一緒に育ち、姉のことは隅々まで理解している。普段、会社でも家でも、姉は決して引かない女傑だ。いつ人に頭を下げて非を認めたことがあるだろうか？ましてや相手は趙三斤のような、彼女の腰に触れ、足を撫でた見知らぬ男なのに。」
「邪魔しないで、あなたには関係ないわ」盧盈盈は嬌嬌を叱りつけると、再び趙三斤に視線を向け、右手を彼の前に差し出して真剣な表情で言った。「心からあなたに謝罪します。私の誠意を信じてください」
相手が手まで差し出してきたのだから、趙三斤にどうしろというのか？
趙三斤は理屈を押し通して人を責めるようなタイプではなかった。彼は軽く微笑むと、盧盈盈の右手を握り、さらりと言った。「盧社長、お気になさらないでください。命を救い、傷を癒すのは医者の本分です。人助けは私の趣味でもあります。誤解については...ふふ、話せば一言で済むことですから」
「医者？」盧盈盈は趙三斤の言葉に食いつき、この機会に尋ねた。「趙さんは専門の医師なのですか？」
趙三斤は頷いたが、すぐに首を横に振った。「私は学校にも行かず、本も読まず、医師免許も持っていません。専門家とは言えませんね。せいぜい町医者程度で、昔なら、いわゆる街道の香具師のようなものです...」
プッ！
隣にいた盧嬌嬌は趙三斤の軽妙な言葉に吹き出し、親指を立てて言った。「兵隊さん、本当に面白いわ！私から見れば、あなたは香具師なんかじゃなくて、神医と呼ぶべきよ！」
「それは恐れ多いです」趙三斤は急いで否定した。
諺にも「木が林より高ければ、風がそれを折る」とある。軍隊に入ってこの数年間、趙三斤はこの道理を深く実感していた。神医？誰が自分を神医と称したら、たちまち医学界全体を敵に回すだろう。大勢の専門家や教授が不満を表明することになる。
祖父は生前、趙三斤にいつも「仕事は派手に、人となりは地味に」と教えていた。
盧盈盈は小さな手を引っ込めると、さらに尋ねた。「趙さんの服装を見ると、軍隊から出たばかりのようですね？今後はどうするつもりですか？この技術で生計を立てるおつもりですか？」
正直なところ、趙三斤の心はずっと林青青のことで一杯だった。今回帰ってきたのも、できるだけ早く林青青を嫁に迎え、彼女と寄り添って暮らすためだった。他の計画については、本当に考えていなかった。
「私が医を学んだのは命を救うためであって、お金を稼ぐためではありません」趙三斤は思わず格好のいい理由を口にして、ごまかした。
盧盈盈の表情が曇った。「医者だって食べていかなければならないでしょう。命を救いながら家族を養えるなら、一石二鳥ではありませんか？」
「どういう意味ですか？」
趙三斤は漠然と感じていた、盧盈盈の言葉には何か裏があるようだと。
盧盈盈はこの機会を捉えて言った。「おそらく趙さんも先ほど見たでしょうが、私は漢方薬の会社で働いています。薬材ビジネスをしているんです。薬材と医者の関係は、趙さんもよくご存知でしょう...」
「それで？」
「私たちの会社は最近、新しい薬材を育成する予定で、専門の医師との協力が必要なんです...」
「つまり？」
「率直に言うと、趙さんに私たちの会社で働いていただきたいのです。給料のことは心配しないでください。試用期間は3ヶ月で、月に5千元。正式採用後は月に1万元...」盧盈盈は長々と前置きを述べた後、ようやく本題に入った。
5千！1万！
この給料水準は大都市では普通かもしれないが、決して高いとは言えない。しかし、小さな山村の一般の人々にとっては、間違いなく夢のような高給で、抗いがたい魅力がある。だから盧盈盈はこの金額を提示した時、自信満々で、趙三斤がすぐに頷いて同意すると思っていた。
しかし実際は正反対だった...
狐の尻尾がついに現れたか。
趙三斤はとっくに予測していた。盧盈盈が自分に頭を下げたのは、必ず何か目的があるはずだと。なるほど、さっき彼女の体に触れたことで、彼女は気持ちよくなり、「骨触診の秘術」に目をつけたというわけか。
「1万？やめておきましょう...」趙三斤は首を振って笑った。
盧盈盈は一瞬驚き、眉をひそめた。「なんですって、少ないとお思いで？もしあなたの実力に満足できれば、いつでも給料を上げることができますよ」
「お金の問題ではありません」趙三斤は口をゆがめ、盧盈盈のかなりの規模の胸に一瞥をくれると、真面目な顔つきで言った。「知識は無価値なものです。盧社長がまたお金の話をされるなら、私は侮辱されたと感じます」
「あなた！」
盧盈盈はのどを鳴らした。趙三斤がこんなに頑固で、しかも高潔を装うとは思わなかった。彼女の負けん気が出て、全く引かずに言い返した。「では言ってください、私と協力するためには何が必要なのですか？」
趙三斤はしばらく考えてから言った。「盧社長のスタイルはなかなかですね。それなら...一晩私と寝てくれたら、あなたの申し出に応じましょうか？」
「この下劣な人！」盧盈盈の顔色が一変した。
「もし盧社長のベッドでの実力に満足できれば、私の方からお金を出して、手当を追加することも考えられますよ」
「死になさい！」
全身の骨が柔らかくなって足が上がらなければ、盧盈盈は飛びかかって趙三斤をトウモロコシ畑に押し倒し、思いっきり殴りつけていただろう。
この男は...あまりにも憎たらしい！
「盧社長がご不満なら、それまでです」趙三斤は軽く笑い、振り返ることもなく立ち去りながら言った。「ご安心を、私はあなたの体には興味がありません。たとえ話をしただけです。知識はあなたの体と同じで清らかなもの。銅臭さがつけば、本来の価値を失ってしまうということを理解してほしかったのです...」
「詭弁！」
趙三斤の颯爽と去っていく背中を見て、盧盈盈は怒りで足を踏み鳴らした。
そして趙三斤がトウモロコシ畑をほとんど出ようとした時、突然後ろから盧嬌嬌の声が聞こえた。「兵隊さん、私があなたと一晩寝るから、姉の会社で働いてくれない？」
ドサッ！
趙三斤は足を踏み外し、道端の排水溝に頭から転げ落ちた...