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82話

唐浅は思い出した。かつて墨無痕に薬を勧めた時、こんな愚かな言葉を口にしたのだ。

「殿下、あの時は……唐謙が軽率な発言をしてしまいました。どうかお許しください」唐浅は頭を下げ、墨無痕の意味ありげな眼差しから目を逸らした。

あの人の眼差しには、彼女の心を乱す力があった。墨無痕にあのように見つめられるだけで、唐浅は胸の鼓動が激しく乱れるのを感じてしまう。

「殿下、ここは危険です。斥候の報告によれば、あと一時刻もしないうちに小型妖獣が到達します。殿下と梅大人はまず雲彼城へお戻りになられた方が」唐浅は話題を変えようとした。

「長寧侯は下官と殿下を見くびっておられるのか?妖獣を見たこともなく、ここで怖気づ...