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79話

北の辺境にいた時、唐浅は野外で寝ることもあったが、少なくとも方角を正しく選べば、火を起こして暖を取ることができた。今のように人里離れた密林の中で、位置を悟られないように、露で濡れた服を乾かすための火さえ起こせない状況とは違っていた。

「殿下、お水を」唐浅は墨無痕の側に片膝をついて、そう言った。

一品親王の装いを脱ぎ捨て、今の墨無痕は逃走に適した軽装だ。一行は皆、惨めな姿になっていた。梧桐城からの逃走の途中、追っ手を避けるため、もともと崇光皇子に従っていた千人以上の禁衛親兵は散り散りになり、それぞれ異なる道を通って北境を目指していた。最初は不意を突いた逃走で多くの町を通過できたが、新帝が墨無...