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61話

だがそれは一度きりのことだった。彼が「唐澈」の名で彼女を呼んだのはたった一度。その後の再会で、上官端華は彼女をずっと「唐谦」と呼び続けた。彼女はそれを上官が自分の改名に合わせて呼び名を変えたのだと思い込み、深く考えることはなかった。

「端陽節に生まれたせいで、良くない時期だったから、家では術士の言葉に従って『端華』と名付けられたんだ。邪気を抑えるためだけど、母の封号『端陽』とあまりにも近い。唐澈はかつて、直接『端華』と呼ぶのは適切ではないと言って、避けていた。彼が私を『端華』と呼んだのは、私たちが喧嘩したときだけだった」上官端華は一歩近づき、唐浅のすぐ傍に立った。そして身を屈めて、その端正な...