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55話

山鬼は傷ついた左前足をかばいながら、よろよろと唐浅の側まで跳び寄ると、痩せた少年を咥え上げ、阻もうとする人間たちを押しのけ、一目散に走り去った。

小左の判断も唐浅と同じだった。長く戦い続ければ、状況は極めて不利になる。

「追え!」

「逃がすな!あの獣の皮を剥いでやれ!」

傷を負った山鬼と唐浅は、後ろからの追っ手や包囲を振り切ることができず、ついに窮地に追い込まれた。生まれながらにして山林の狩人であっても、今や大勢の松明を掲げた長生教の信者たちに囲まれ、恐怖に駆られた小左は慌てふためき、進む道を見失っていた。

小左が立ち止まったとき、唐浅は前方を見つめ、激しい水音を耳にした。

目の前は...