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37話

唐浅はかなり早い段階で、墨無痕が持っていた香袋に混じっていた匂いが、決して香料のものではないことに気づいていた。雲中衛が陣を敷く際、妖獣をある方向へ誘導することがあるが、そのような効果を持つ薬草は数多くあり、統帅として彼女はそれぞれの匂いを全て覚えていた。

しかし今は朝堂の上、諸国の面前であり、この件について言及すべき時ではなかった。

それに、墨無痕のさっきの反応は、唐浅から見れば、あまりにも奇妙だった。

あの落水事件の時とそっくりだった。

疑念を胸に抱えながら、唐浅は最も保守的で確実な言い方を選んだ。

「父上、お子が一言申し上げます」

「無涯」皇帝は階下で黙り込んでいる唐謙に一瞥をくれたが、...