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306話

木箱の設計は精巧でも巧妙でもなく、ただ底の隙間に木片で中敷きを作っただけの代物だった。あまりにも適当で心がこもっていない、まるで目隠しして泥棒をするような滑稽さだ。もし木箱が床に落ちたり、硬いものにぶつかったりすれば、きっと砕け散り、中に隠された秘密が露わになるだろう。

まさに目の前の状況のように。

確かに彼女らしい作風だ。奇抜な技巧を弄することが苦手で、堂々としていて、一通の手紙を隠すのにも、こんなにも拙いやり方をする。

墨無痕は密かにため息をつき、身をかがめた。本来は木箱を拾い上げるだけのつもりだったが、底板が彼が箱を持ち上げた瞬間に外れ、封筒がそのまま床に残された。裏返しになり、墨...