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302話

墨無痕は溺れる感覚を覚えていた。

光が頭上にあるのに、どれだけもがいても、その手の届くところにある温もりに触れることができない。自分の体を制御できず、何か秘めやかな闇に深みへと引きずり込まれ、もう逃れられない。冷たい水が口や鼻に流れ込み、最初は充血による刺激を感じるが、すぐに麻痺してしまう。呼吸が塞がれ、助けを求める声すら出せないのだから。

自分が深淵へと落ちていくのを目の当たりにし、命が流れ去っていく感覚がこれほど強いのに、なすすべもなく、制御できない。

そして、彼はもがくのを諦め、自らの堕落を受け入れ、闇にすべてを飲み込ませた。

少年か少女か、誰かが彼の手を力強く掴むまでは。

初...