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292話

先帝の葬儀は、即位の際に既に定められていた遺言に従い、すべて簡素に執り行われた。

墨無錯は最後の命令に従い、あまりにも簡素な葬列と、ほとんど無視できるほど短い儀式を取り仕切った。かつてあれほど輝かしく、縦横無尽に活躍していた兄は、あっという間に帝陵に葬られた。毒と陰謀によって命を落とした父帝よりもさらに慌ただしいほどで、胸中には複雑な思いが渦巻いていた。

自分を実の兄弟のように扱ってくれた人だった。墨無錯はかつて墨無痕を仰ぎ見ていた。兄であるはずなのに、まるで手の届かない存在のように思えていた。

皇兄は生まれながらにして高貴であり、不吉な呪いを背負っていたにもかかわらず、父帝の寵愛を受け...