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249話

墨無痕が目を覚ました時、腕の中にあったあの柔らかな温もりはもうなかった。瞬時に目が覚め、後悔の念が全ての感覚を支配した。

先ほどまで彼を抱いていた浅浅がいた。幻か現実か、言葉にできないほどの心地よさだった。だが夜明け近くになって、雲中衛から急報が届き、長寧侯自らが確認すべきとのことで、唐浅は彼の耳元でそっと甘い声で「報告を確認したらすぐ戻ってくるわ」と約束したから、墨無痕はようやく警戒を解き、唐浅が起き上がり服を着て去るのを許した。だが日が昇り始めても、佳人は彼の腕の中に戻ってこなかった。墨無痕はようやく騙されたような不快感を覚えた。

彼は起き上がり、床に落ちていた衣服を何気なく拾い、まっ...