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228話

視界が揺らぎ始め、めまいの感覚がますます強くなる。爪を手のひらに食い込ませ、その痛みだけが意識を保つ唯一の手段だった。

この感覚に唐浅は非常に不穏なものを感じた。

香りの中に、何かが潜んでいる。

油断していた。ただの北方の薫香だと思い、しかも姑夜王も同じ香りを嗅いでいるのだからと警戒を解いてしまった。

唐浅は床に座り込み、顔を上げて姑夜王を見上げた。相手の表情はすでに歪みを帯び、高みから彼女を見下ろしながら言った。「皮肉なものだな。この香料は庆が孤に贈ったもの。古教の珍しい毒薬と知らぬとでも思ったか。孤の病を抑えながらも、孤をこの香りから離れられなくする。中毒、迷い、救いようのない状態へと…」...