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206話

唐浅の心の中のどこかにある氷が、今まさに崩れ落ちようとしていた。

もう抑えきれない、彼の腕の中に飛び込んで、彼にキスをして、自分がどれほど彼と別れたくないか、どれほど彼のそばを離れたくないかを伝えたい。

特に今、唐浅が墨無痕の姿を目にしたとき——血まみれで、彼女のためにあんなに傷だらけになっている姿を。

もう耐えられない、もう演技を続けられない、もう途中で諦めそうになる。

しかし短剣の冷たい光が唐浅を冷静に戻らせた。一方で賀蘭慶が墨無痕の急所を狙って刺そうとする短剣を押さえ込み、もう一方で賀蘭慶を押しのける際に、彼の腰から裂金の剣を抜き取った。その音は澄んでいて鋭く、金属が裂けるような音だった...