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139話

唐浅は黙って聞きながら、手に持つ玉蘭の簪を強く握りしめていた。

彼女は分かっていた。墨無痕はきっと今、焦りに胸を焼かれているのだろう。そうでなければ、彼女を鳳栖宮に一人残し、何も言わずにいるはずがない。

結局のところ、誘拐されたのは彼の貴妃なのだから。

唐浅はそこに座り、墨無痕にとって江初雪はどれほど重要なのかを考えていた。

鸢語の話では、皇帝は梧桐城へ戻っていた上官端華に命令を下し、端華に軍を率いて梧桐城近郊を封鎖させ、捜索に協力させているという。

彼は江初雪のために、寝食を忘れ、兵を出して街を封鎖してまで、江初雪の行方を探そうとしている。

彼は江初雪をどれほど大切にしているのだろう。

もし...