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132話

湯が冷たくなった頃、浴室での時間は終わりを告げていた。

墨無痕は力なく崩れかけていた唐浅を湯から抱き上げ、バスタオルで包み込んだ。その動作は優しく、愛おしさに満ちていた。「熱いお湯に入れ替えるよう言おうか?」

「いいの」唐浅は首を振った。「そうしたら、みんなに知られちゃう……」

言葉を途中で止めたが、墨無痕がすでに笑みを浮かべているのを見た。彼はタオルで彼女の髪を優しく乱しながら「わかった」と応じた。

二人が着替えを済ませ、墨無痕が唐浅の髪を拭いているとき、宮人の扉を叩く音が聞こえてきた。

墨無痕は機嫌が良かったので、いつもより柔らかな口調で「何だ?」と...