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124話

それは金属器に相応しい色ではなく、どんな酒とも異なる様相だった。あまりにも陰鬱で深遠な色彩が、黄金の杯の底で絡み合い、不気味な形を描き出していた。まるで何かの符号のように、悪意に満ちた意味を帯びていた。

だが他の者たちは、その杯の底に潜む不気味な模様に気づいていないようだった。

「止まれ」普段は宴席でほとんど沈黙を守る長寧侯がふいに口を開いた。声は冴え渡っていた。

天佑国の使者も一瞬戸惑い、安靖王の次席という高位に座す侯爵を不思議そうに見つめた。

傍らに座していた安康王の墨無錯でさえ、困惑の表情を隠せなかった。噂に聞く常に冷静沈着な長寧侯がこれほど礼を失するとは予想だにしなかったのだろ...