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107話

「汐は実は、瑾兄さんのことが好きなの」梅以瑾の名前を口にした時、少女の声はほとんど聞き取れないほど小さく、はにかみを含んでいた。「瑾兄さんが私を救ってくれたの」

唐浅はその場に立ち尽くし、一瞬何を言えばいいのか分からなくなった。

しかし、どこか安堵感も覚えた。

もし唐汐が本当に梅以瑾を好いているなら、この縁談はそれほど悪いものではないだろう。少なくとも唐家の二人の娘のうち、一人は愛する人と結ばれることができる。

彼女自身のように、最も愛した人から、あんなにも軽んじられることなく。

「お姉様は汐が姉様の婚約者を奪ったって、怒ってるの?」唐汐が突然尋ねた。小心翼翼と、唐浅の表情を窺いながら。

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