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58話

雲山霧海、群峰が取り囲む中、狐岐山が目の前に迫っていた。あの日、花葬影が敗れてから、もはや花十七を引き留める者はいない。顧宵は人々が動揺している隙に、簡単に荷物をまとめて北陽山を下り、昼夜を問わず狐岐山へと急いだ。少年が去り際に伝音で告げたのは狐岐山だった。きっとそこが花十七の行き先なのだろう。

「知君は大人になったな。花挽歌が彼を九幽閣に連れ戻し、族譜に名を連ねた。今や九幽閣の十七公子となっている」

小川の岸辺で、少年はゆっくりと水面に薬の粉を注ぎ入れていた。足元には小さな瓶や壺が山積みになっている。ここは下流だから、薬粉が他の場所に流れる心配はない。花十七は小川の中に立ち、衣服と血肉が...