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56話

香炉の上から、煙の香りが立ち込める中、痛みに苦しむ花十七は心ここにあらず。彼の部屋は静寂に包まれていた。壁一枚隔てた隣の部屋には多くの人々がいることを彼は知っていた。彼が目を覚まし、かろうじて生き延びることを待っている人々が。

無言の笑みが唇の端に広がり、その蒼白さに僅かな血色を添えた。玉初弦が薬の入った椀を手に、うつろな表情で部屋に入ってきた。

「彼らに話したのか?」

花十七が無言で尋ねると、玉初弦は薬椀を差し出し、花十七の手の甲に三度指を滑らせた。声は出さなかったが、彼女の瞳には砕け散った星々が満ちあふれ、感情が乱れていた。彼女も今では理解していた。小叔母が花十七をこれほど大切にして...