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29話

舟遊びの上で、葡萄の美酒と夜光杯、玲瓏たる翡翠の環佩が響く。若き公子が舟に斜めに寄りかかり、先ほどの一幕を目に収めていた。その火の勢いはまだ消えておらず、夜光杯が指先でくるくると回る様子に、傍らで仕える小僧は戦々恐々としていた。この御方は確かに財力豊かだが、この夜光杯はさらに珍品中の珍品、極めて稀少なもの。もし本当に手から落として割れでもしたら、自分も見ているだけで胸が痛むだろう。

「瑶華映闕」

小僧が心配しようがしまいが公子には関係なかった。ただ、先ほど損をしたと知らずにいた少年は、きっと彼が一度も会ったことのない愚かな弟だろう。こんなに簡単に誘拐されるとは、前途多難だな。公子は唇と歯で...