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19話

北海、無涯の涯。

花十七は花問海の腕の中で居眠りしていた。彼の体調は芳しくなく、海風が時折彼の頬を撫でていき、塩辛い潮の香りを運んでくる。それは懐かしさという名の感覚だった。

息沢挽はすでに長時間待ち続けていた。お茶は冷め切り、拝師の礼も埃をかぶっているというのに、花問海はなかなか現れなかった。三十三天の明臣のあの一言は確かに耳にしたが、息沢挽はそれについて何も説明したくなかった。天道の下では神でさえ言い難い事情があるもの。手がかりを残したのは彼ができる精一杯のことだった。誤解されても構わない。息沢挽はずっと知っていた。この世界で真と偽は自分によって決まるのではなく、他人の信頼によって決ま...