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2625話

安二狗は遠くへは行かず、ドアの外で浴室の様子を窺っていた。中から何の物音も聞こえないことに気づき、モリアが本当に用を足す必要がなく、きっと中で何かを考え込んでいるのだろうと察した。安二狗は二人の関係がここまで来たのなら、さらに一歩進んでもいいはずだと思った。

アダムスとの面会がこの後に控えていることを考えると、時間が限られている。もたもたしている場合ではない。そこでドアをノックすると、中にいたモリアはびくりと驚いた。こんなタイミングで安二狗がトイレのドアをノックするとは思ってもみなかったのだ。「誰?」安二狗だとわかっていながらも、彼女はそう尋ねた。

「私です、奥様。お腹の調子が悪くて…入ら...