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86話

「六月の揚州の天気は、変わりやすいものだ。

先ほどまで晴れていたのに、ほんの少しの間に雨が降り出した。

葉文峰は傘を蘇陽に手渡し、二人を心配そうに見つめた。

三人は車で来ており、蘇陽と葉不言が後部座席に座り、葉文峰が運転していた。

しかし、ここまでが限界で、葉文峰はこれ以上先へ進むことができなかった。

葉文峰は屋敷の方を深々と見つめ、何度も蘇陽に葉不言をしっかり支えるよう念を押した。

葉不言のような年齢になると、どんな小さな衝撃も受け入れられないのだ。

車は郊外の小さな庭園の門前に停まった。門には二人の警備員が立ち、それぞれ軍用犬を引いていた。見るからに凶暴そうな犬だ。

しか...