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50話

「私の恋人は天下無双の英雄。いつか彼は七色の祥雲に乗って、私を迎えに来てくれる」

この思いが尚秋萱の心に芽生えてからというもの、それは止まることなく膨らんでいった。

十七、八歳の少女たちは、まだ恋と童話の幻想に酔いしれる年頃だ。

以前の尚秋萱なら、クラスメイトのそんな幼稚な心理を鼻で笑っていたのに、今や彼女自身もこの避けられない熱に浸っていた。

「萱萱、数学の先生の顔見なかったの? あはは、私たち二人を本当に間違えちゃったのよ」

沈妍妍は大笑いし、少しの慎みもない様子だった。

沈妍妍は尚秋萱の親友で、二人は第一高校で有名な美人コンビだった。

もちろん、尚秋萱と違うのは、沈妍妍の家...