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196話

「大丈夫か?」犬山熾が尋ねた、その口調には些かの心配が滲んでいた。

もちろん、暗殺者はそれが本当の心配だとは思っていなかった。

「任務は完了した」暗殺者は低い声で言った。「部屋には男女一人ずつ、男は俺のナイフの毒を受けた」

彼はもちろん知らなかった。部屋にいたのは男女ではなく、紛れもなく男が二人、ただ一人は女装していただけだということを。

そして彼が刺したのも、蘇陽ではなく、桜井彦和だったのだ。

「蘇陽は医者だぞ、お前の毒は本当に効くのか?」犬山熾が問うた。

「見血封喉、毒が回れば五分以内に意識が朦朧として、すぐに死ぬ」

暗殺者は胸の傷を慎重に手当てしていた。幸い彼女は女性で、胸に大きな肉の塊...