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183話

須陽が浴室の壁に耳を当てて外の音を聞いている時、山田桜吹もまた壁に耳を当てていた。

浴室からは物体が床に落ちるような音は聞こえず、中の人物が気絶していないことを証明していた。

「やるな」桜吹は心の中で思った。

「足音が止まった」須陽も浴室の中で考えていた。外の暗殺者が自分が気絶していないことに気づいたのだと分かっていた。

二人とも極めて慎重で、しばらく動きを見せず、部屋は恐ろしいほど静まり返り、時折水滴が床に落ちる音だけが聞こえていた。

「出てきなさい。さもないとあなたの奥さんに手を出すわよ」女忍者が再び声を上げた。

しかし浴室からは依然として返事がなかった。

「なんて冷酷な人間なんだ...