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886話

「不適切な言い方かもしれないけど、茜の手は玉城瑶より少し滑らかな気がする。

でも、玉城瑶の手も柔らかいんだ。

もう死ぬんだろうな、これも温柔の郷で死ぬってことか?

俺の物語はここで終わりなのか?」

水流に乗って、私たちはあの水怪の口腔を通り抜け、すぐに光一つ差さない真っ暗な通路へと入っていった。

マスクを外せば、この通路から漂う強烈な悪臭を嗅ぐことになるだろう。半分消化された食べ物の残骸が触れる感触は吐き気を催させる。しかもそれは激しく蠕動し、私たちを前方へと押し流していた。

ここはおそらく、水怪の咽頭や食道のようなところだ。

少し意外だったのは、この巨大な怪物には歯がないようで、咀嚼...